急須全体に動物や花の細工を施したスタイルで有名な素三。
これらの細工は型を使用するのではなく、すべて手で作られており、一点一点異なる表情が楽しめる。このような細工急須を作るのは急須の街常滑といえども素三しかいない。急須以外にも香炉、茶杯、酒器と作品の幅は広い。
焼き物の街・常滑において、代々急須作りに携わっている名家の四代目。
初代から4代まで雰囲気は多少似ているものの、それぞれの代で異なるスタイルを確立してきた。
初代は公家や由緒ある神社などに頼まれて急須を作っていた。
二代目は主に高級な抹茶器を製作。
『素三が作ったものであれば間違いない』と言われる程の名声を得て、高級百貨店、旅館を借り切って展示会をするほどであった。
細工急須を本格的に始めたのは父・三代目から。平凡な作品を制作するのを嫌い、ぐい吞みに人形を入れこんだ特徴のある作品をつくったが、『こんなものは売れない』という地元の一部業者の声をよそに人気があがり、その後独特の細工を急須にも施すようになった。
4代目は子供の頃陶芸の泥を汚いと感じ、陶芸にあまり興味を持たず育った。
陶芸家になるつもりはなかったため、工業高校を卒業後、サラリーマンに。
陶芸一家であれば当然後を継ぐことを親に指示されるものであるが、そうはされなかったのは父親自身、無理やり丁稚奉公に出され嫌な思いをしたため、子供には好きなことをさせようと心に決めていたからだという。
しかし、親の仕事をみているうちに自然に陶芸に惹かれ、25歳の時にこの世界に入る。
親からの技術的な指導は特になかったため、見よう見まねでその技を覚えたという。
急須の口にまで細工を施したのは四代素三が初めてで、その独自性は際立っている。
「おもしろいと思ったものは、他人がどう思うか気にせずとりあえず作ってしまうんです(笑)」
急須自体にもこだわりがあり、現在では機械で作られることの多い茶こしを素三は半球状に手作業でたくさんの細かな穴をあける。茶葉が詰まりにくく、お茶がスムーズに注げるというメリットがあるが非常に手間のかかる作業だ。茶こしが大きい割に、注ぎ口が細いので見栄えがよく、より繊細にお茶を注ぐことができる。機能性の良さと見た目の面白さを両方楽しめる作品になっている。細工に目がいきがちであるが、こういった急須自体へのこだわりも感じて欲しい。
『日々是丹精』がモットーである。
1950年 常滑市に生まれる
2019年 永眠
長三賞陶業展 入選
長三賞陶業展奨励賞 受賞
伝統産業優秀技術者県知事表彰
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