大森宏明

面取が施された表面に、幾筋もの線が斜めに入った優美な姿。

大森宏明の代表的な作風、面取だ。

 

ろくろを使わず指先で粘土を薄く広げ形状を作ることでできる、器の内外の独特の凹凸はなんとも味わい深い。

 

岡山県備前地方で作られる備前焼は、釉薬を掛けず、薪で7-14日間続けて炊いた窯の中で焼成し、自然な色合いを楽しむ焼物である。千年続く伝統的な焼き物であるが、大森宏明の作品は伝統的なものを守りながらも今の感覚をプラスした新しさも感じさせる。備前焼は厚いものが多いが、京都じこみの薄造りも特徴である。

 

 

1969年岡山県備前市伊部に生まれる。

父は仁堂窯三代大森輝彦。

仁堂窯は茶器に龍や動物などの造形を茶具に載せる細工物で、備前でも屈指の系統である。初代は岡山県の重要無形文化財に認定され、昭和天皇に献上する作品として選ばれたほどの腕の持ち主。

 

幼少のころから土の煉り方を父に学ぶ。

祖父の仁堂窯二代の大饗仁堂氏から寵愛を受け、動物の置物を一緒に造ったり、小学生低学年のころにはろくろを教えてもらい、お茶碗くらいであれば成形できるようになっていた。この頃からすでに「自分は将来陶芸をやるんだ」と漠然と思っていたという。

 

中学、高校のころには窯炊きの手伝いをした。

地元の高校を卒業すると、日本では珍しい陶芸の科目がある京都嵯峨美術短期大学(現京都嵯峨芸術大学)に進学。京都の大学なので京焼や、釉薬、窯での焼成についてなどの勉強をした。

京都独特の薄造りを備前焼にも取り入れたのはこの頃の経験から。

 

卒業後2年間アルバイトしながら京都のやきものについて勉強し、その後故郷に戻り父のもとに弟子入り。

 

大学在学中、そして卒業後、京都で勉強した京焼は器の形がしっかり出るものであったが、弟子として勤める間に備前独特の意図的に崩すことを学ぶ。

「繊細な京焼とは違い、備前焼はあえて形を崩す美があります。それは作品にどっしりとした力強さを与えます。備前の土味が生かされた味わいになるんです。」

 

4年後独立したあと、公募美術展に積極的に参加。

平成18年には日本伝統工芸展で入選を果たす。日本伝統工芸展で入選を果たすことは若手の登竜門である。

「仁堂窯といえば欠かせないのが細工物、そして宝瓶。これら仁堂窯が培ってきた伝統を大事にしながら新しい感覚を取り入れて高いレベルで融合させたい」と語る。


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